東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)で発生が続く高濃度の放射性物質を含む汚染水は、処理や貯蔵の過程で汚染廃棄物を生み出している。本紙取材班は2日、原発構内に入り、その保管現場を回った。東電や政府は2023年春にも、汚染水を浄化処理した後の水を海洋放出する計画だが、大量の放射性廃棄物の後始末は先送りされたままだ。(小野沢健太)
◆濃縮廃液「正直に言って具体策はない」
「どうやって処分していくか、正直に言って具体策はない」。1~4号機西側にある広大なタンクエリアの一角で、東電の広報担当者は苦しそうな表情で言った。眼前に、コンクリートの壁に囲まれた屋根付きの小屋。壁のすき間から横長の水色のタンクが見えた。持参の線量計はタンクエリアで毎時0・5マイクロシーベルト前後を示していたが、小屋近くで同4マイクロシーベルトにはね上がった。
厚さ20センチほどのコンクリート越しに強烈な放射線を放っているタンクの中身は、事故直後に発生した「濃縮廃液」。津波の影響で塩分を含んだ高濃度汚染水を淡水化し、原子炉の冷却に再利用する過程で出た廃液の沈殿物だ。
泥状で処理が難しい上、高線量で近づけない。20年1月に福島県が現地確認した際には、壁の内側で最大毎時800マイクロシーベルトあった。その場に1時間20分もいれば、一般人の年間被ばく限度に達するレベルだ。
泥状の廃液が200立方メートル、その上澄み水が9000トン。汚染水処理が安定し、これ以上は増えない。東電は23年度から試験的な処理を始める計画だが、手法の検証すら始まっていない。
◆「手をつけられない」貯水池の汚染プラスチック
小屋の北側に、土俵のように盛り上がった更地がある。13年に汚染水の漏えい事故を起こした地下貯水池が埋まっている場所だ。
当時、汚染水の貯蔵は綱渡りだった。追い込まれた東電は、電線の真下でタンクが造れない場所に穴を掘って遮水シートをかぶせ、主に放射性ストロンチウムが残る汚染水計約2万4000トンを入れた。しかし、地中に漏れて使えなくなった。
汚染水の抜き取りは終わったが、池の中に補強材として入れたプラスチック部材が激しく汚染されて残る。池の上に立つと、線量計の表示はあっという間に毎時3マイクロシーベルトに。広報担当者は「浄化処理した水を入れていれば撤去もできたと思うが、汚染水を入れてしまったのでなかなか手をつけられない」と声を落とした。
◆たまり続ける廃棄物も
海洋放出が計画されている処理水は、多核種除去設備(ALPS)で浄化した水だ。その処理過程でも泥状の廃棄物が発生し、HICと呼ばれるポリエチレン製の容器(直径1・5メートル、高さ1・8メートル、厚さ約1センチ)に入れて保管している。
敷地南側の保管場所では、コンクリート壁の内側にHICの上部が見えた。高線量汚泥が入ったHICは一部が既に耐用年数を超え、22年度末にその数が87基になる。劣化によって破れる恐れがあり、新しい容器への移し替えを迫られている。だが作業時の被ばく防護策を整えるのに時間がかかり、汚染が激しい容器の入れ替えは2月22日に始まったばかりだ。
処理水の海洋放出が始まれば、約1000基ある保管タンクは徐々に減る。ただ汚染水の発生をゼロにする計画はなく、浄化処理は続く。その間、処理で出る廃棄物はたまり続けるため、長期的な管理方法の検討を先送りすることは許されない。
0 件のコメント:
コメントを投稿
コメントありがとうございます